利益の分配

利益の分配/努力はその方向性が大事である

「利益の確保」のページではどうすれば利益を出すことの必要性について書きましたが、このページではその利益(剰余金)をどう分配していくかについて考えていきます。会社の決算書には「税引き前利益」という項目があります。これは税金を支払う前の利益を意味していますが、同族経営である中小企業の場合は役員報酬などの金額や関連会社との取引等によりこの利益を調整することが多いので、会社の正確な利益を求めるひとつの方法を示しておきましょう。

はじめに税引き前利益に同族(身内)に支払っている役員報酬(給与)の金額をプラスしてください。そこから外部(銀行等)への借入金の年間返済金額を引いてください。残った金額が本来会社の自由に使える利益であったと推測されます。そしてその金額を役員報酬・税金関係・内部留保として3等分に分けます。

具体例で見てみましょう。会社の税引き前利益が600万円、役員報酬(同族合計)が1,300万円、年間借入返済額が100万円であったなら、本来の会社の利益を再計算すると600+1,300−100=1,800万円となり、これを3等分すると再計算後の役員報酬・税金関係・内部留保の各金額は600万円と算定できます。このうちこれからの投資金額となる内部留保の600万円は優先して確保していただきたいところです。次に税金関係ですが、再計算前の状態で発生する法人税、役員の所得税・住民税・社会保険料の合計金額が仮に320万円とすると、再計算後の税金関係600万円との差額が280万円生じます。再計算後の役員報酬600万円は手取り額として考えていますので、この金額に税金差額280万円を足した金額880万円が本来同族内で分配して良いと考えられる金額になります。つまり当初の役員報酬の金額1,300万円は払い過ぎと考え、再計算後の役員報酬880万円との差額420万円については役員から会社に(たとえば役員から借入という形で)戻しておかなくてはなりません。

■ 最計算前
当期利益〈600万〉、役員報酬〈1,300万〉、当期借入返済額〈100万〉
■ 再計算後
会社の真実利益1,800万=600万+1,300万−100万
■ 真実利益を配分(3等分)
内部留保 600万、税金一式 600万、役員報酬 600万で合計1,800万

・当初の利益にかかる法人税と役員報酬にかかる税金等 320万(※)
・配分した税金一式と上記との差額 280万
・配分した税金に上記の金額をプラス 880万
・当初の役員報酬と上記の金額の差額 420万
→420万は役員報酬を取り過ぎているので会社に戻す必要がある

(※同族の役員が2名で各々の役員報酬の額が800万と500万と想定し、各人の所得税・住民税・社会保険料を計算)

さて内部留保したお金の使い道はこれからの事業拡大や設備投資に使うことになります。「利益の確保」のページにも書きましたが、いまの時代は消費者のニーズや商品サイクルがとても早いので同じやり方でひとつのことを続けていても売上の維持や増加は見込めません。常に新しい分野を開拓し多角的なモノの見方で事業を進めていかないと生き残れません。そのためには設備投資を行いソフト面も含めて常に事業の改善を行っていく必要があります。また会社は地域と共栄共存するという側面もありますので、会費や寄付、地域との交流費もここから支出し、会社として地域にも還元する姿勢をきちんと見せていくことが必要です。

毎期の利益がなかなか見込めず事業拡大のための設備投資ができないときは、「借入で補てんする」というのもひとつの選択肢だと思います。借入は資金繰りのための手段ですが、大切なのはその借入の目的と返済計画です。事業経費や税金の支払いのために借入を行うということは、現在のままの事業活動では会社を維持できないと考えなければなりません。その場合は「利益の確保」のページを再度読んでいただき儲けが出る事業体に転換していくことを急ぐべきです。多くの中小企業が経費の補てんのために行なう借入は将来の返済が不可能な場合がほとんどだからです。